名作『すずめの戸締り』に登場する白猫・ダイジンの正体や隠された役割とは?

名作『すずめの戸締り』に登場する白猫・ダイジンの正体や隠された役割とは?

国境も世代も超えて愛される、アニメーション監督・新海誠の最高傑作とされる『すずめの戸締り』。本作で重要な鍵を握る猫・ダイジンについて、ダイジンの正体や隠された役割について解説します。

ダイジンの正体とは?

ダイジンは、物語の序盤で登場する白い猫で、愛らしい姿をしています。しかし、ダイジンは閉じ師である草太を椅子に変え、人間の言葉を話します。また、ダイジンが行く先々では、地震を起こすミミズが現れ、後ろ戸が開いてしまいます。そんな『すずめの戸締り』のダイジンの正体は、鈴芽が廃墟で見つけた後ろ戸の封印である要石なのです。

ダイジンの役割

鈴芽によって要石としての役割から解放されたダイジン。要石とは、日本の西と東に存在する特に封印を強めるべき後ろ戸に置かれた封印の霊石であると古文書で明らかになります。偶然にも要石を引き抜いた鈴芽と、要石であるダイジンに椅子に姿を変えられた奏太は、ダイジンを追ってひたすら東に向かいます。ここでは、ダイジンの役割について詳しく紹介していきます。

1.導き手としての役割

鈴芽と奏太は、「椅子に変えられた奏太の身体を元に戻す」という理由でダイジンを追います。ダイジンの行く先々で後ろ戸が開き、ミミズが出現するため、ダイジンの目的地や目的を考えさせながら、鈴芽たちを導いていきます。物語終盤、ダイジンは後ろ戸を開けていたのではなく、後ろ戸が開きそうな場所に2人を導いていたことも分かります。要石としての役割を失っても、閉じ師を導く役割を果たしていたのでしょう。

2.一言の重みについて考えさせる役割

ダイジンは、鈴芽に「うちの子になる?」と聞かれて喜び、鈴芽との時間を邪魔する奏太を椅子に変えてしまいます。ダイジンの行動に悪意はなく、すずめへの好意だけがあります。無邪気な行動が多くの人を危険に晒すことへの恐怖もありません。

しかし、物語中盤で鈴芽に強く拒絶されやせ細ってしまうダイジンの姿は、一言の重みとその影響を強調しています。この関係は、鈴芽と環の関係性とも重なり、物語に深みを与えています。

3.鈴芽の心の解放者としての役割

鈴芽は、幼い頃に震災で故郷と母親を亡くしています。震災についてあまり語らない鈴芽は、「生きるか死ぬかなんてただの運なんだ」と言うように、過酷な体験をしてきました。鈴芽は、奏太を要石から解放するため後ろ戸を探し、ダイジンはそれを手伝います。

拒絶されても鈴芽に寄り添うダイジンのおかげで、鈴芽は奏太を解放します。そして、過去の自分が後ろ戸の向こうに見たものによって心を解放できたのです。

4.誰もが生かされていることを実感させる役割

奏太が要石になったことからも分かるように、ダイジンやサダイジンは元人間とも考えられます。そして要石は、人の手でしか刺せないことから、ダイジンたちは誰かのために要石になったと考えられます。また、閉じ師の奏太が唱える祝詞は、自然に敬意を払い、人は自然の中で生かされているということを表します。

そして、同時に人は人にも生かされているということが、土地から響いてくる人の声でも分かります。鈴芽を好きと言ったダイジンが再びミミズを縛るために要石になってくれているということも、我々は忘れてはならないのです。

まとめ

『すずめの戸締り』に登場するダイジンは、ただの愛らしい猫ではなく、物語の鍵を握る重要なキャラクターです。彼の正体や役割を通じて、観客は物語の深層に触れ、キャラクターたちの成長や変化を見守ります。ダイジンは、鈴芽や奏太を導く存在であり、同時に観客にも一言の重みや心の解放の重要性を教えてくれます。

新海誠監督の緻密なキャラクター設定とストーリーテリングが、この作品をさらに魅力的なものにしています。